1.凍結融解胚移植
体外受精・顕微授精により複数の胚(受精卵)が得られたとしても、多胎を防ぐために、その治療周期で胚移植できる胚の数には制限があります。その周期に胚移植しない胚は、治療施設の責任の元で培養を終了(破棄)することになりますが、せっかくできた胚ですから、捨ててしまうのは納得のいくことではないはずです。
「胚移植しなかった胚を凍結保存しておいて、後の周期に融解して胚移植する」治療が、凍結融解胚移植です。
対象
- ・OHSSの重症化が予想される
2.凍結保存
2-1.培養
凍結保存をするために、胚を胚盤胞(受精5~6日目の胚)まで培養します。
2-2.凍結方法
① 凍結保存
胚の凍結保存には「凍結ガラス化法」を用います。-197℃の液体窒素の中で、半永久的に保存可能です。
② 保存期間
当院の凍結保存期間は 1年間です。1年ごとの更新で、継続保存 または 保存終了(当院の責任のもとにおいての破棄)の判断をしていただきます。期日が近くなりましたら 同意書をお送りしますので、受け取り方法をお選びください。
凍結更新・延長はこちら3.スケジュール
準備中
4.ホルモン補充
「子宮に、着床(妊娠成立)の条件があれば、その時に胚移植を行う」というのが受精卵凍結・融解胚移植の治療の基本の考え方です。「排卵すれば着床条件ができる」ということになります。
4-1.自然排卵での治療周期
自然周期で排卵が確認できれば、その2〜3日後に胚移植が可能です。
4-2.薬剤を用いた治療周期
① 排卵誘発剤を使用する
排卵が順調に無い(排卵障害)場合などには、この方法で十分です。自然周期の排卵では着床期の条件が悪い(黄体機能不全)場合にも、この方法を用いることで着床条件を作ることができます。排卵誘発剤を使って排卵が確認できれば、その2〜3日後に胚移植が可能です。
②ホルモン補充周期
内田クリニックでの融解胚移植はほぼこのホルモン補充周期で行います。使用する期間を定めておき、子宮内膜の条件と、血液中のホルモンレベルにより着床環境が整っていることが確認できれば、胚移植を行うことができます。
排卵の時期を探す検査はこちら 黄体期サポートはこちら 排卵誘発剤はこちら5.融解胚移植
5-1.融解・回復培養
胚移植可能な条件が整ったことを確認して、液体窒素の中から受精卵を取り出し、一定の条件下で融解を行います。生存受精卵を2〜6時間の培養を行い、回復が順調な胚を確認していきます。
回復率は98%
融解にあたって、条件の悪い胚は回復できずに細胞が壊れてしまう場合もあります。内田クリニックでは98%の胚が回復していますが、ごくまれに移植できる胚がなくなり胚移植がキャンセルになることもあります。
5-2.胚移植
胚移植は午後16:00以降に行います。胚移植の方法は、体外受精・顕微授精の胚移植と同じです。
体外受精・顕微授精の胚移植AHA(アシステッドハッチング)
透明帯から胚の中身が出るのを助けるため、「透明帯に穴をあける(開口)方法」「透明帯を薄くする(菲薄化)方法」をAHAといいます。着床(妊娠)は透明帯から出た(ハッチング(孵化)した)胚の中身が子宮内膜にもぐりこむことで成立します。胚の中身がハッチング(孵化)するのをアシストする(助ける)ことで、着床が起こりやすくなります。透明帯を傷つけることに不安があるかと思いますが、透明帯はいずれ溶けてなくなり、着床には関与しません。
SEET法
胚移植を行う2〜3日前にSEET液(培養液)を子宮内に注入します。「着床期の子宮内膜は胚とシグナル交換(クロストーク)をしており、胚は着床に向けて子宮内膜の環境を修飾している」という基礎研究の概念に基づいています。胚培養液には、子宮内膜胚受容能を促進する胚由来因子が存在することが確認されています。胚盤胞移植に先立ち、培養液を子宮内に注入することによりシグナルを送り、子宮内膜を刺激します。その刺激を受けて、子宮内膜が着床に向けての準備を始めることで胚の着床しやすい環境にしていくことを期待する方法です。(先進医療)
5-2.胚移植後
黄体期サポートはこちら6.胚移送
当院で凍結保存した胚を他院で胚移植に用いるために輸送する、または他院から当院に移送する方法です。当院と患者さまとの打ち合わせに加えて、当院と他院の打ち合わせも必要です。