体外受精・顕微授精
体外受精・顕微授精は、1978年にイギリスで初めて妊娠・分娩に成功した不妊治療法です。
日本においては、1983年に日本初の体外受精児が誕生しました。その後、急速に治療が普及し、現在では不妊治療において重要で欠かせない治療となっております。日本国内においてはART登録施設620件、出生児の16人に1人は体外受精によって誕生しています。
適応
- ・卵管が詰まっている
- ・精子の条件が悪い
- ・抗精子抗体が陽性だった
- ・原因不明
体外受精・顕微授精を受けられるかたは、6ヵ月以内の感染症とクラミジア検査の検査結果と、1年以内の尿検査・一般健康状態検査の結果が必要です。
一般健康状態検査 感染症とクラミジア検査スケジュール
体外受精・顕微授精では、実際に治療を行う1つ前の周期(前周期)からホルモン剤の投与を行います。
スケジュール表(クリックで拡大)
動画もごらんください
3.卵巣刺激
2-1.卵巣刺激法2種
体外受精・顕微授精の受精率と妊娠率を考えると、1回の採卵で成熟した卵子を複数得ることが必要となります。また、採卵の前に排卵をしてしまうと卵子を確保することができないので、一度にたくさんの卵胞を発育させつつ、排卵がおこらないように止めておく方法をとります。
① 排卵誘発剤と点鼻薬
点鼻薬は発育した卵子が排卵しないように止めておく役割を持っています。体外受精を行う前の周期から、または月経が開始してから使い始め、採卵の前々日まで使用します。排卵誘発剤の注射は、卵胞が発育するまでほぼ毎日行います。
② 排卵誘発剤とアンタゴニスト
GnRHアンタゴニスト(セトロタイド、ガニレスト)も発育した卵子が排卵しないように止めておく役割を持っています。当院の基本的な治療では、GnRHアンタゴニストの皮下注射薬を使用しています。卵胞発育がある基準に達したらGnRHアンタゴニスト皮下注射を使い始めます。排卵誘発剤の注射は、卵胞が発育するまでほぼ毎日行います。
2-2.採卵日の決定
上記の2つの方法のどちらかを行いながら、経腟超音波検査とホルモン検査を行い、卵胞の発育を確認していきます。卵胞が十分に育ったら、採卵日を決定します。
採卵日の前々日20:00(採卵の37~38時間前)には、卵子の最終発育に不可欠なHCG注射を打ちます
黄体期サポートはこちら 排卵誘発剤はこちら4.採卵
卵巣にできた卵胞に腟の壁を通して針を刺し、卵胞の中から卵子を取り出すことを採卵といいます。採卵は麻酔をし、経腟超音波で観察しながら、卵胞液とともに卵子を吸引します。
4-1.当日のスケジュール
局所麻酔のかた | 全身麻酔のかた | |
---|---|---|
朝食 | 軽食 | 絶食 |
精液持参 | 事前に打合せをした時間にお持ちください | |
麻酔 | 膣内にスプレーとゼリー | 坐薬、点滴により静脈麻酔 |
採卵 | 経腟超音波検査で観察しながら行います5~10分で終わります | |
安静 | 10:30~11:30 | 11:30~12:00(15:30~17:00) |
診察 | 安静解除後 | 安静解除後診察後に再度安静をお願いする場合があります |
車の運転 | ご自分で運転可 | 運転できませんご家族の送迎が必要です |
帰宅後 | 採卵当日はできるだけ安静にお過ごしください※採卵当日の入浴は避け、シャワーのみにして下さい |
4-2.精液の調整
採取された直後の精液は、運動性の低い精子や不純物が含まれています。高度生殖補助医療では、持ち込まれた精子に精液検査と調整を行い、運動性の高い良好精子だけを集めて卵子とかけあわせます。
5.受精
4-1.体外受精(媒精)
採卵した卵子を、良好精子とかけ合わせます。通常、精液所見に問題がない場合はこちらの方法を選択します。
4-2.顕微授精ICSI
卵子の細胞質内に直接精子を注入します。顕微授精には様々な方法がありますが、内田クリニックでは卵細胞質内精子注入法(ICSI;イクシー)を行います。ICSIでは卵子の細胞質内に直接精子を入れるため、1個の精子で受精が可能です。
4-3.split
卵子が複数採取できた際に、卵子を2つのグループに分けでそれぞれ体外受精と顯微受精を行う方法です。
6.胚培養
受精から胚移植までの間、胚を子宮に近い環境に整備された培養器の中で保管し、発育を観察します。
内田クリニックでは、全症例にタイムラプス観察を行っています。
6-1.初期胚
初期胚は受精から2~3日培養した胚です。原則、初回の方は、初期胚での胚移植が基本です。
① メリット
体外の培養期間が短いためより自然に近い状態で移植することができます。
② デメリット
観察の期間が短いため、妊娠に至る胚かどうかの正確な判断はできません。
6-2.胚盤胞
胚盤胞は受精から5~6日培養した胚です。
① メリット
5~6日目まで受精卵を培養することにより、胚の質の診断が可能であり、より妊娠の可能性の高い、よい条件の胚を胚移植することができます。採卵後5~6日待つ間に子宮内がより着床しやすい環境となり、子宮内膜と胚との同期化が期待できます。
② デメリット
受精卵のうち胚盤胞まで発育するのは約30%程度です。たくさん卵子を得られたとしても胚盤胞まで発育しないために、胚移植がキャンセルとなる場合があります。臨床応用されるようになってから日が浅いため、現在のところ従来の方法に比較して確立された治療法ではありません。
7.胚移植
胚を子宮内に移植します。移植胚数は、多胎妊娠を防ぐために原則的に1個とされています。胚移植は麻酔も必要なく短時間に簡便に行うことが可能です。11:00頃、16:30頃のいずれかの時間で行っています。
おなかの上から超音波検査を行い、胚移植チューブの先端を確認しながら胚移植を行います。そのため胚移植時間に合わせて“膀胱充満(おしっこを我慢してもらう)”をお願いしています。
新鮮胚移植
採卵で得られた胚を、その周期に移植します。
凍結融解胚移植
採卵で得られた胚をその周期では移植せずに凍結保存します。保存した胚は、のちの周期で融解して移植します。
8.胚凍結
胚が複数得られたとしても、1度に胚移植が可能なのは原則1個です。移植しなかった胚(余剰胚)を凍結保存して、別の周期に移植する方法もあります。
内田クリニックでは受精卵が多くできた場合、余剰胚のうち、良好な発育をした胚盤胞の凍結保存を行っています。
凍結保存はこちら 凍結融解胚移植はこちら