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1.子宮の着床条件についての検査

繰り返し良好胚を移植しても妊娠につながらない状態を「着床不全」と言います。

着床不全の原因は「胚自体の問題」「子宮の問題」「胚と子宮の両方の問題」が考えられます。

1-1.胚自体の問題

胚自体の問題の場合、治療の手段はありませんが、PGT-Aを行い染色体の数の異常のある胚を避けて、正常胚を移植ことができます。

PGT-A 着床前胚染色体異数性検査

胚の染色体異常のうち、染色体の数の異常があるか否かを調べる検査です。女性の年齢に伴い染色体異数性あるの胚の発生率は増加していき、胚移植ごとの妊娠率は低下していく原因となっています。PGT-Aによって染色体数に異常の無い胚を選んで胚移植を行うことによって、高齢の女性でも高い妊娠率を期待できることが報告されています。

PGT-Aは日本に導入されて日が浅い検査です。保険適応ではありません。また対象者が限定されているため、ご希望いただいてもPGT-Aを実施できない場合があります。

1-2.子宮の問題

このページで詳しくお話しします。

①子宮内細菌叢検査2 子宮内フローラ検査(先進医療)
②慢性子宮内膜炎検査 CD138検査(自費診療)
③子宮内膜受容能検査 ERPeak検査(先進医療)
体外受精・顕微授精

2.子宮内フローラ検査

子宮内フローラ検査(外部リンク)

従来無菌と思われていた子宮内にもさまざまな菌がフローラ(細菌叢)を形成しており、細菌のバランスが妊娠率へ影響を与えることがわかっています。子宮内に多く生息するラクトバチルスなどの善玉菌の量が多ければ、雑菌や病原体を抑え込むことができ、着床率が高まる可能性があると言われています。逆に善玉菌が少なければ流産・早産のリスクが高まるとされています。

2-1.子宮内フローラと妊娠率の関係

子宮内のバランスが異なるグループを比較した図です。子宮内フローラ正常群(子宮内のラクトバチルスが90%以上)と、子宮内フローラ異常群(子宮内のラクトバチルスが90%以下)を比較すると、正常群は異常群の2倍の妊娠率と8倍の生児獲得率が報告されています。

ラクトバチルスは小腸や膣・子宮内に存在する乳酸菌で、善玉菌の一種です。悪玉菌の増殖を阻害します。悪玉菌が多い子宮内では炎症が起る可能性があり、炎症が起こると活発になった免疫細胞が胚を異物として攻撃するように働きます。ラクトバチルスの多い子宮内は炎症が起こる可能性が低く、妊娠にとってもよい環境といえます。

2-2.検査詳細

①検査でわかること

この検査では次世代シーケンサーという機械を用いて、子宮内のすべての菌のDNAを解析することで、ラクトバチルスを含め「何の菌が」「どれくらいの割合でいるか」という、子宮内フローラの状況を正確に知ることができます。

  • ・子宮内が人工授精に適切な環境か調べる
  • ・原因不明の不妊の原因が見つかる可能性がある
  • ・流産・早産の原因ともなる感染症の有無を調べる
  • ・胚移植をしても不成功を繰り返している場合、対策が見つかる場合がある など
② スケジュールと検査方法

検査は排卵後の着床期に行います。専用の小さな器具を子宮内に入れて、組織を採取します。短時間で終わりますが、痛みを伴います。

② 検査結果

採取から3~4週間後に結果がわかります。検査結果によっては、サプリメントや抗菌剤を服用します。

凍結更新・延長はこちら

3.CD138検査

3-1.慢性子宮内膜炎

近年、慢性子宮内膜炎と着床障害との関係が注目されています。慢性子宮内膜炎は、最近感染などによる子宮内膜間質への形質細胞(CD138陽性細胞)の浸潤を特徴とした疾患です。慢性子宮内膜炎は局所の炎症疾患であり、これを治療することで着床率を改善させることを目標としています。また、子宮内膜炎がある場合は、子宮内膜受容能検査(ERPeak検査)の結果に影響がでるため、着床不全を疑う検査の1つとしてこの検査を行います。

形質細胞(CD138陽性細胞)とは

骨髄で作られる白血球の一種であるBリンパ球(B細胞)が成熟することによってできる細胞です。正常な状態では、細菌やウイルスが体内に侵入すると、一部のBリンパ球が形質細胞に変化します。形質細胞は細菌やウイルスを撃退する抗体を作り出し、感染や疾患の発生を防ぎます。

3-2.検査詳細

検査内容

病理組織診断によって子宮内膜基底層を採取し、子宮内膜組織の形質細胞(CD138陽性細胞)の免疫染色を行います。

慢性子宮内膜炎の原因はさまざまですが、子宮内膜基底層に形質細胞(CD138陽性細胞)が複数存在することが確認できれば、細菌感染によって内膜が炎症を起こしていることがわかります。そのため、この検査を行うことで慢性子宮内膜炎の診断がつきます。

判断基準
  • 判定基準 5個/20HPF以上ならは 慢性子宮内膜炎と診断する。
  • ※HPF:high power field, 400倍=400倍で20視野にCD138陽性細胞が5個以上
スケジュール

月経終了後~排卵日前までに行います。

子宮内膜細胞の採取は、月経後のまだ卵胞の小さく、子宮内膜も厚くない時期に行います。子宮内膜細胞が厚くなる着床期では子宮内膜基底層付近の細胞の採取が困難になるからです。

3-3.検査後の治療・処方について

  • ・CD138陽性細胞を多数認めた場合は、子宮内フローラ検査の結果と合わせて治療方針を決定します。基本的には 抗生剤による治療を行います。
  • ※治療が必要となった場合は、内服治療後に通常、再検査が必要です
  • ※治療後の再検査で改善が認められない場合には、追加の治療を行います。例えばフラジールを14日間内服します。

4.ERPeak検査

4-1.着床の窓(WOI)を調べる

子宮内膜はどの時期に胚移植しても着床できるわけではありません。その着床できる時期のことを着床の窓と言われます。着床の窓が開いている時期でないと胚を受け入れないため、着床の窓が開いている時期に合わせて胚移植を行う必要があります。着床の窓がずれている場合、つまり、着床の窓が閉じている場合は正常な胚を移植しても着床が起きません。反復着床不全の30%の方が着床の窓がずれているといわれています。

ERPeakは子宮内膜受容能検査といい、移植する当日の内膜が着床可能な状態にあるかどうかを、子宮内膜を採取して遺伝子レベルで調べる検査です。子宮内膜の状態を着床可能に整えているつもりでも、遺伝子レベルでは準備が整っていない場合もあるためです。

4-2.検査詳細

①スケジュール

凍結融解胚移植を行うときど同様にホルモン補充周期を進め、胚移植を行うタイミングで子宮内膜の組織を採取します。その後、検体を検査施設へ送って分析します。

②採取

凍当クリニックで行う子宮内膜生検(組織の採取)の方法は、とても細いカニューレ管を腟から子宮内へ挿入し、検査に必要な量の組織を採る侵襲の低い手法です。そのため、痛みは少しありますが、麻酔などは必要ありません。


凍結融解胚移植はこちら
③判定結果

結果は以下のいずれかで報告されます。報告まで2~3週間かかります。

  • 受容期前…WOIがマイナス24時間ずれています
  • 受 容 期 …WOIのずれがない結果です
  • 受容期後…WOIがプラス24時間ずれています
  • 非受容期…WOIがプラスマイナス24時間ずれています
  • 結果なし…ー

結果に基づいて、胚移植を行うタイミングを定めて、融解胚移植周期のホルモン剤をスタートします。

※検査結果が受容期前または受容期後の場合でも、推奨される移植時期について「着床の窓がどの程度ずれているので、どのくらい修正して移植したらいいか」を判断ができます。


内田クリニック -島根県松江市 婦人科・内科胃腸科-